乳児湿疹について

乳児湿疹が顔だけに出るのはなぜ?
赤ちゃんの肌はとてもデリケートで、特に顔まわりは湿疹が出やすい部位です。顔にだけ湿疹が現れている場合、いくつかの皮膚トラブルが考えられます。
考えられる主な皮膚疾患
- 乳児脂漏性皮膚炎 生後まもなくから見られることが多く、皮脂の分泌が多いことが原因とされます。 赤みを帯びた発疹や、黄色っぽいフケ、かさぶたのような症状が特徴で、眉や額、頭皮にも出ることがあります。
- アトピー性皮膚炎 2〜3ヶ月以降に発症することが多く、頬や額から始まって徐々に広がるケースが見られます。 乾燥肌・かゆみが強く、アレルギー体質との関連が疑われる場合もあります。
- 新生児ざ瘡(赤ちゃんニキビ) ホルモンの影響で生後2週間ごろから頬や額に赤いブツブツが出ることがあります。自然に治ることが多く、特別な治療を必要としないケースがほとんどです。
顔の湿疹への基本的な対応
- 清潔と保湿を意識したスキンケア
ぬるま湯でやさしく洗い、低刺激の保湿剤(白色ワセリンなど)を使うのが基本です。
- 刺激を避ける
ガーゼやタオルで強くこすらず、よだれや食べかすはこまめに拭き取って清潔を保ちましょう。
- 自己判断での薬の使用は避ける
湿疹の種類によっては薬の使い分けが必要なため、症状が長引いたり悪化する場合は小児科や皮膚科を受診してください。
受診の目安
湿疹がひどくなってきた、かゆみで眠れない、発熱や全身に広がっているなどの症状が見られる場合は、早めに医師の診断を受けることをおすすめします。
新生児ざ瘡
新生児ざ瘡は赤ちゃんにできるニキビのことです。新生児は、母胎内で母親からホルモンを受けつぎます。そのため、生まれてすぐからしばらくの間は皮脂分泌が非常に盛んになるため、ニキビができてしまうと考えられています。また、皮膚の常在菌であるマラセチアも関係しているのではないかとも言われています。
男の子に比較的に多く、新生児の20%程度にみられるポピュラーな皮膚疾患です。
生後2週間頃に症状があらわれ、数か月のうちに自然に無くなっていきます。
治療
毎日、お風呂に入れてあげる時に、石けんをよく泡立ててやさしく洗ってあげてください。お肌に石けんが残らないようよくすすいでから、柔らかいタオルなどでふんわりと水気を拭いてあげましょう。一般的には、特に薬などは不要で、こうしたスキンケアをきちんと続けることで、半月程度で良くなっていきます。
当院では、スキンケアの方法なども丁寧に指導しておりますので、気がかりなことや疑問に思うようなことがありましたら、いつでもご相談ください。
乳児脂漏性皮膚炎(乳児脂漏性湿疹)
新生児ざ瘡と同様、胎内で母親から受けついだホルモンの影響で、黄色っぽいかさぶたのようなものができるのが乳児脂漏性皮膚炎です。マラセチアが関連しているのではないかと考えられている点も新生児ざ瘡と同様です。
症状と治療
皮脂分泌が盛んな、頭皮、顔、腋の下といった部分に、黄色いかさぶたのような痂皮ができます。これを乳痂と言います。またフケのようにカサカサしていることもあります。見た目で心配される方が多いのですが、こちらも乳児期によくある症状の一つです。ほとんどのケースでは適切なスキンケアで自然に治っていくことが多く、あまり心配することはありません。
スキンケアとしては、入浴前にワセリンやオリーブオイルなどをかさぶた部分に30分程度塗っておき、痂皮が柔らかくなってきたところで、石けんをよく泡立ててやさしく洗ってあげてください。お肌に石けんが残らないようよくすすいでから、柔らかいタオルなどでふんわりと水気を拭いてあげましょう。一般的にはこうしたケアを続けると2か月程度で自然に治まってきます。しかし、もし湿疹がひどくなるようでしたら、状態に応じてステロイド外用薬を適切に使用することもあります。
詳しいスキンケアの方法などについて分からないことがあれば、いつでもご相談ください。
皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹
新生児期をすぎると、母親から受けついだホルモンの影響が消えていき、急激に皮脂の分泌が減っていきます。そのため、皮膚がダメージを受けやすくなって皮膚症状も増えてきます。
皮脂欠乏症は、皮脂が少なくなって保湿が効かず、すぐに肌か乾燥してしまう状態です。またそれによって肌に炎症が起こって湿疹になったものが皮脂欠乏性湿疹です。
子どものうちは、痒みに対して抑制が効きませんので、激しく掻きむしってしまいます。ただでさえ、皮膚機能が発達段階にあって、まだ成人のような皮膚のバリア機能ができあがっていない上、皮膚を掻き崩すことでさらにバリア機能が低下し、そこから侵入する物質によって知らず知らずのうちにアレルギー体質になってしまうとも言われています。そのため皮脂欠乏症と皮脂欠乏性湿疹は積極的に治療する必要があります。
症状と治療
皮膚の乾燥を食いとめるため、部屋の湿度を下げないように気をつけましょう。またスキンケアも適切に行う必要があります。
治療では、保湿能力の高いヒルドイドのようやヘパリン類似物質の軟膏やクリームが処方されることが多いのですが、単にそれを用法通りに塗って満足するだけではなく、それとあわせて適切なスキンケアを行う必要があります。
子どもの皮膚も画一的に考えられるわけではなく、一人一人の状態にあわせて、クリームの塗り方やその他の保湿方法も異なってきます。また住環境の相違などもあり、できる範囲のことと言っても条件は大きく異なっています。
当院では、その子、その環境にあわせた柔軟な処方と、適切なスキンケアの方法を丁寧に指導しております。
なお、様々な治療やスキンケアによっても痒みのある湿疹が続くようなら、アトピー性皮膚炎も考えられますので、早めにご相談ください。
おむつかぶれ
接触性皮膚炎の一種で、おむつの下で皮膚が尿や便、汗などに接触し続けることによって炎症を起こし、かぶれとなっています。
症状と治療
かぶれを起こしたことで、皮膚は痒みや痛みを伴って赤く腫れます。重症化した場合、少し皮膚の奥までただれが進行し、びらん状態になり、出血することもあります。
通常は、視診のみで診断が可能で、治療としては、ワセリン、亜鉛華単軟膏などの塗布を行います。ただし、びらんが起こっている場合などは、一時的に適切な量のステロイド軟膏を使用することが有効です。
このような治療を行っても改善が見られないケースでは、カンジダという真菌の一種に感染していることも考えられます。その場合は抗真菌薬を使用して治療することになります。
当院ではこのような場合、KOH法という真菌検査を行ってしっかりと鑑別し、適切な治療を行っています。
よくある質問
乳児湿疹にワセリンは本当に効果がありますか?
はい、乳児湿疹のスキンケアにおいてワセリンは有効です。ワセリンは肌のバリア機能を補い、外部からの刺激を防ぐ働きがあります。特に入浴後すぐの肌が潤っている状態で塗ることで、肌の水分を閉じ込め、乾燥や炎症の悪化を防ぎます。ただし、湿疹がジュクジュクしている場合や、細菌感染が疑われる場合は使用を避け、必ず医師に相談してください。
母乳が原因で乳児湿疹になることはあるの?
一般的に母乳そのものが乳児湿疹の原因になることはありませんが、母乳中の成分に影響されるケースはあります。たとえば、母親が摂取した食物がアレルギーの引き金になることがあり、ごくまれに赤ちゃんの湿疹が悪化することがあります。ただし、これも一因に過ぎず、肌の未熟さや環境要因の方が影響は大きいとされています。自己判断で母乳をやめることはせず、気になる場合は医師へ相談してください。
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いは?
乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は似た症状を示すことが多く、見分けが難しいことがあります。乳児湿疹は生後すぐの赤ちゃんに多く、皮脂の分泌過多や環境刺激により一時的に生じるもので、成長とともに自然に治るケースが多いです。一方、アトピー性皮膚炎は繰り返し炎症が起こる慢性の皮膚疾患で、家族歴や強いかゆみ、乾燥肌が特徴です。判断に迷う場合は医師の診断を受けることをお勧めします。
乳児湿疹が顔から全身に広がったときの対処法は?
顔から始まった湿疹が全身に広がる場合、保湿だけでなく医師による治療が必要になることがあります。赤みが強くなったり、かゆみがひどい、ジュクジュクしている、寝られないほど不快そうな場合は、早めに受診してください。ステロイド外用薬などの治療が必要になることもありますが、適切に使えば短期間で症状が改善することが多いです。
乳児湿疹に石けんは使ってもいいの?
乳児湿疹があるときでも、基本的に石けんの使用は問題ありません。ただし、大人用の洗浄力が強いものは避け、低刺激・無香料・弱酸性のベビー用石けんを選ぶことが大切です。洗うときは泡でやさしく包み込むように洗い、すすぎ残しがないよう十分に洗い流しましょう。こすりすぎや熱すぎるお湯は肌を刺激するので避けてください。
湿疹のある部分は保湿と薬、どちらを優先すべき?
基本的には薬と保湿の両方が大切ですが、使い方には順序があります。湿疹がある場合、まずは処方された薬(ステロイドなど)を塗り、その上から保湿剤を重ねる方法が一般的です。これは、薬の効果を保ちながら肌全体の保湿も守ることができるためです。自己判断で保湿のみに切り替えるのではなく、医師の指示に従って使い分けましょう。
湿疹がよくなった後も保湿は続けるべき?
はい、症状が治まった後も保湿は継続してください。湿疹は肌のバリア機能が弱っているサインでもあり、改善したように見えても再発しやすい状態です。特に季節の変わり目や乾燥しやすい冬は再発のリスクが高まるため、日常的な保湿ケアを続けることで、肌を健康に保ち再発予防につながります。